ステーション1 アブラハムの宿営 ―もてなし―(後半)
- 2020.03.11
- アブラハムの子供たち
教えるための情報
このステーションでは、「人をもてなすこと」について教えます。
ヘブル人を含む中東の遊牧民にとって、もてなしはとても重要で、細かい作法があります。今日もベドウィンの間では、同じようなもてなし方を続けています。お客さんには食べ物と水を与え、快適で楽しく、くつろげるようにしなければなりません。避難場所を探している敵でさえ歓迎し、他の客人と同じように扱わなければなりません。ただ、一つだけ例外があります。和解をしていない相手とは、食事を一緒にしてはならないのです。食事をともにするということは、それがパンとぶどう酒であったとしても、和解のしるしになります。過去のすべての過ちが赦され、新しい関係に入ったことを意味するのです。それゆえ、もし敵が宿営に避難してきたら、必要なものをすべて与え、十分に食べさせなければならないのですが、和解しようと思っていないなら、一緒に食事をしてはならないのです。
お客さんを歓迎し宿営に招き入れたら、主人は自分や家族の命を失っても、その人の命と安全を守る義務があります。創世記19章1~11節にあるロトの話は、それを実行している良い例です。ロトは、自分の娘を失ってでも客人を守ろうとしました。逆に、モアブ人は、イスラエルの民が約束の地へ行く旅の途中、モアブの地を通らせず、もてなす責任を果たしませんでした。それで、イスラエルの会衆に永遠に加われなくなってしまったのです(申命記23章3~6節)。
荒野におけるもてなしには、様々な方法があります。主人は客に深く頭を下げ、大きな動作でお客さんの額、唇、胸に触れ、「シャローム アレイヘム(平安があなたにありますように)」と言います。客も同じしぐさで、「アレイヘム シャローム(あなたに平安がありますように)」と言います。もう一つの挨拶のしかたは、主人が客の肩を掴(つか)み、右の頬(ほお)、左の頬という順に、続けて3回口づけするというものです。その後、友好な関係を築くために、パンとぶどう酒を一緒に食します。主人かしもべが、客の足を洗い、食べ物を与え、踊りや物語りなどで楽しませます。
学びの進め方
ステーション・リーダーは、アブラハムの役をしてください。生徒はお客さん役です。アブラハムはお客さんを迎え入れ、宿営に入って床に座るよう勧めてください。親愛の情を豊かに表現し、何度もおじぎをしましょう。ラグや枕、クッションがあれば、生徒が横たわってもいいでしょう。
全員が座ったら、「私について聞いたことのある人はいるかな」と尋ね、自分はアブラハムであり、ユダヤ民族の父であると自己紹介してください。妻のサラ役やしもべ役であるアシスタントも紹介しましょう。
自己紹介が終わったら、砂漠の生活では、もてなしがとても重要だと伝え、生徒を立たせて先ほどの二つの挨拶のしかたを実演しましょう。一人の生徒を前に出して座らせ、足を洗います。洗っている間に、もてなしのしかたとその大切さ、聖書に記録されているもてなしの例を話します。
サラ役の人は、水差しとたらい(陶器か金属でよい)、そして手ぬぐい(単色で吸水性の良い布)で、何人かの足を洗います。また、アブラハムの話している間に、女の子たちにエジプト風の化粧をしてあげてもいいでしょう。青いアイシャドウをつけ、太い黒のアイライナーを、目じりから上向きに引くのです。
そのあと、生徒に食べ物とジュースを配ります。メソポタミアではどんな生活をしているか、楽し気に話します。「あなたはどんな生活をしているの?」と尋ねて、アブラハムと生徒たちの生活を比較してください。学校では遅刻すると杖で打たれること、間違うとみんなの前で叱られて恥をかかされることなどを、伝えます。子供たちとやり取りをしながら、「歴史的背景」を用いて、アブラハムの生活が身近なものとなるように教えてください。
写真も使ってください。らくだの鞍(くら)、牛のしっぽのハエ叩き、ベドウィン族の太鼓、炭でできたアイメイクの道具、コーヒー豆挽きの写真を、見せます。
最後に、あなた自身と神との関係について話してください。「以前は、たくさんの神々がいると信じていた。だから、『神はおひとりだ』と知ったとき、いやもう驚いたよ。他の民族にとっては、それが今でも受け入れがたいことなんだ。でも、この多神教の人々の中で、神は私を選んで『友』としてくださった。そして私に約束を与え、守り続けてくださっている。これは本当にすごいことなんだよ」。
「私が一番大切にしていることは、神は唯一であるという真理を、息子たちに教えることなんだ。そしてその真理が、世代から世代へ受け継がれてほしいと、心から願っている。神は、私の子孫を空の星ほどに増やすと約束して、名前をアブラムからアブラハムに変えてくださったんだ。アブラハムっていうのは、多くの民の父っていう意味なんだよ。私は、自分の子孫が、唯一真の神を愛するようになってほしいと祈っている。これからどのような未来が子供たちを待ち受けているか、想像するとわくわくするね」。
何度もおじぎをし、大きな身振りで、生徒たちに訪問のお礼を言い、送り出してください。
このステーションのリーダーが女性なら、サラ役で同じように進められます。その場合、しもべに助けてもらい、サラの視点で話します。アブラハムは親密さを大きく表現しますが、サラは控え目なふるまいで、歓迎してください。
雰囲気づくり
「アブラハムの宿営」を作るのは、想像より簡単です。次のものをいくつかでも使えば、砂漠の真ん中にいるような雰囲気を作れます。
- テントの骨組みを組み立て、黒い布やタペストリーをかけたもの。
- 穀類や乾燥した豆(できればひよこ豆)を入れたかご。
- かご、陶器、果物の模型。
- 岩を円状に並べ、真ん中に小さな枝の束を置いて、キャンプファイヤーを作る。
- オアシスに見立てて、青い模造紙を敷き、周りに岩や植物(本物でも模型でもよい)、真鍮(しんちゅう)の容器を置く。
- 段ボールかベニヤ板に描いた、羊やらくだ。
- 厚紙で作り壁に貼ったシュロの木。
- 巻いたカーペットと模造紙で作ったシュロの木。
衣装
アブラハムとサラは、典型的な「聖書時代」の衣装で、長い外套を着て頭の覆いを着けてください。
しもべ役の男性は、同じような衣装で大丈夫です。あるいは、上半身はだかで、ウエストからかかとまである明るい色の布を「スカート」として巻いてもよいでしょう。これは、アブラハムの故郷ウルで、男性(身分を問わず)が着ていた典型的な服でした。
食べ物
いくつか選んで準備してください。
- ピタパン
- 白チーズ
- やぎか羊のチーズ
- あんずやなつめやし、イチジクの干したもの
- アーモンドやくるみ
- 中東産の黒か緑のオリーブ
飲み物は、オレンジ、グレープフルーツ、ブドウのジュースなど。
知っていましたか
- シュメール人は、お祝い好きです。お祝いの食事には、羊の肉、魚、種を入れないパンが出てきます。お楽しみの時間には、ハープ、タンバリン、太鼓を使った音楽、踊りと歌があります。ゲームもします。中でも人気なのはボードゲームで、あらゆる世代の人々が楽しみました。
- アブラハムが学生だった時代、校長先生は「学校の父」と呼ばれ、アシスタントは「大きなお兄さんたち」と呼ばれていました。校長の役割は、指導としつけです。アシスタントは生徒を手伝い、書き方の練習のために粘土板を作ってくれました。生徒は、間違ったことを言ったりしたりすると、みんなの前で叱責(しっせき)されます。時には、杖で打たれることさえありました。
-
前の記事
ステーション1 アブラハムの宿営 ―もてなし―(前半) 2020.03.04
-
次の記事
ステーション2 エジプト(前半) 2020.03.18