ステーション3 シナイ山(後半)

ステーション3 シナイ山(後半)

学びの進め方

このステーションのリーダーは、モーセとともに旅をしてきたイスラエル人の役になります。エジプトからシナイ山へ向かう荒野の旅です。アシスタントは、イスラエル人でも、救いの奇跡を見て真の神を信じたエジプト人の役でもいいでしょう。出エジプト記19章のシナイ山の場面と、20章の十戒を必ず読んでください。

リーダーは、生徒たちを歓迎し、自分とアシスタントの自己紹介をし、次のように話してください。
「私は、モーセと一緒にエジプトを出た、イスラエル人だ。私たちは奴隷で、いつも苦しい労働をさせられた。苦役はいよいよ激しくなり、れんがを作るための藁さえ、もらえなくなったんだ。奴隷状態から救われたときには、心から神をあがめたよ」。
「紅海が分かれたときには、それはもう本当に驚いた。私たちは、本当に乾いた地の上を、歩いたんだ。そのあとも、荒野を進む中、昼は雲の柱、夜は火の柱に、毎日導かれた。これは私たちにとって、安心だったね」。

「唯一神を信じる信仰は、エジプト人にいつもばかにされたよ。だけど、このように神を知ったことで、私の信仰はとても確かなものになったんだ。唯一なる神が、エジプトの多くの神々を打ち破ったのを、はっきりと見たからね」。

シナイ山の体験も話します。
「あのとき、雷といなずま、角笛の音と、煙る山を見たんだ。圧倒されて、恐れたよ。しかし、神の教えであるトーラーをいただいて、私たちは心から安心した。神に愛されていることをこれほど確かに感じたことはなかったね」。
次いで、十戒について語ります。「一つ目と二つ目の命令は、私にとってとても大切なんだ。というのは、私は、すべての人々に唯一なる神のメッセージを伝える役割を担っているのだから。ところで、三つ目の命令について、あなたたち(生徒たち)は、私とは違った理解をしているようだね。あなたたちは、軽々しく誓ったり神の名を使ったりしてはならないという意味だと信じている。私もそう信じているけれども、私たちの言語で『唱える』というのは『運ぶ』という意味なんだ。神を信じる者として、私たちは神の名をあらゆる場所に運んで行く。だから、もし私たちが悪いことをすれば、私たちだけでなく、神の名が貶(おとし)められることになってしまうのだよ」。

また、「シェマ」(申命記6章4~9節)について、生徒たちに話します。テフィリンやメズザー、タリットが手に入れば、最高です。手に入らなければ、ピクチャーカードの写真を見せます。いずれにせよ、ピクチャーカード2、3、4の情報を用いてください。

希望者を前に立たせて、テフィリンやタリットを着たり、メズザーを使ったりさせるとよいでしょう。テフィリンの着け方は、この章の後ろのほうに載っています。

終わりに、「みんなに神が何をしてくださるか、楽しみにしてるよ」と声をかけてください。

雰囲気づくり

壁に模造紙を貼るか、大きな段ボール箱を開いたものにマーカーで、大きな岩や荒野の空を、描いて雰囲気を出します。左右には植物を置き、また大きな石を置き、腰掛けにして生徒たちに話します。なければ、立ったままか、床に座るかして教えます。

衣装

イスラエル人の役をするリーダーは、ショール型の覆いを、薄茶色系の布で作って頭にかぶり、この時代の典型的な衣服に身を包みます。足にはサンダルを履き、自分は奴隷状態から出てきたばかりだということを意識します。
アシスタントの人もイスラエル人という設定なら、リーダーと同様の衣装を着ます。もし、改宗したエジプト人という設定なら、ひざ丈か長めの白いチュニックを着て、黒い帯を結び、白い覆いを頭にかぶって黒いひもを結びます。サンダルを履いてもよいでしょう。エジプト人であれば、男女問わず、イヤリング、ブレスレット、アンクレットなどのアクセサリーを身に着けます。

テフィリンのつけ方

  1. まず、袖のある服を着ている人は、利き手でないほうの袖を、肘より上までまくりあげます。時計や指輪など、アクセサリーは全部外します。利き手につけている分にはOKです。
  2. 手のテフィリン(テフィリン・シャド・ヤド)のひもをほどき、テフィリンの箱(バイト)を、肩に一番近い側から出ている皮の部品(マアバルタ)を使って、上腕につけます。結び目(ケシェル)は、身体に一番近い側にし、上腕の筋肉の一番上に来るようにします。すべて整ったら、次の言葉を唱えます。
    ヘブル語
    バルク アター アドナイ エロヘイヌ メレク ハオーラム アシェル キドシャヌ ベミツヴォタヴ ヴェツィヴァヌ レハニアク テフィリン
    日本語
    我らが神である主、世界の支配者であるあなたを賛美します。あなたが律法(ミツヴァ)をもって私たちをきよめ、テフィリンを着けるよう教えてくださいました。
  3. ひも(レツァ)を引っ張って、テフィリンが腕にしっかりと結びつけられた状態にします。練習すれば、滑り落ちてこない結び方が分かってきます。結び目が緩くならないように、ひもの残りの部分を腕に結びつけます。
  4. バイトを固定するために、ひもを1回上腕に巻いてもよいでしょう。
  5. 次に、肘から手首にかけて、ひもを7回巻きます。「7回」というのは、詩篇に出て来る7つの単語を思い出させるためだと教えるラビもいます。それは、「あなたは御手を開き生けるものすべての願いを満たされます」(詩篇145篇16節)です。
    アシュケナジ系ユダヤ人は、ひもを反時計回りに(自分の身体に向って)巻きますが、セファルディ系のユダヤ人は時計回りに(自分の体から外に向かって)巻きます。ひもの黒い側を外側にしていなければなりません。
  6. 7回巻いたあと、ひもを手のひらに巻きます。親指と人差し指の間の部分に巻き、ひもの先は巻いた部分の下に入れ込みます。
  7. 頭のテフィリン(テフィリン・シェル・ローシュ)をほどき、バイト(箱)を額の上の一番高い所に、真ん中に来るように置きます。結び目は頭の後ろに、うなじの近くに来るようにします。結んだひもの先は前に持ってきて、黒いほうを外側にして胸の前に下げます。そして、次の祝福の言葉を唱えます。
    ヘブル語
    バルク アター アドナイ エロヘイヌ メレク ハオーラム アシェル
    キドシャヌ ベミツヴォタヴ ヴェツィ ヴァヌ アル ミツヴァト テフィリン
    日本語
    我らが神である主、世界の支配者であるあなたを、賛美します。あなたが律法(ミツヴァ)をもって私たちをきよめ、テフィリンについて教えてくださいました。
  8. 手のひらに巻き付けたひもをほどきます。アシュケナジの人々は、ひもを中指に3回巻きます。1回は指の下側に、2回目は真ん中に、3回目は2つの輪をまたぐように巻きます。こうすることで、ヘブル語のアルファベットのダレトの形になります。ダレトはエル・シャダイ(全能の神)の綴(つづ)りの2番目に来る文字です。それから、次の節を朗読してください。
    ヘブル語
    ヴタイラスティク ケ ローラム ヴェアイラスティク レエ ベツェ
    デク ウヴミシュパト ウヴケセド ウヴラカミム ヴェアイラス イク レエ ベ
    エムナー ヴェヤダアト エト アドナイ
    日本語
    「わたしは永遠に、あなたと契りを結ぶ。義とさばきと、恵みとあわれみをもって、あなたと契りを結ぶ。真実をもって、あなたと契りを結ぶ。このとき、あなたは主を知る」(ホセア2:19~20)。
  9. ひもの残りを薬指と小指ではさみ、手の外側に「V」の字を作ります。それから、ひもをもう一度手のひらに巻いて、ヘブル語の「シン」の字を作ってください。「シン」は、エル・シャッダイ(全能の神)の最初の文字です。
  10. テフィリンを外すときには、順序を逆に追います。最初に、ダレットとシンを手から外し、頭のテフィリンを外して、ひもを包みます。手のテフィリンのひもを外して、2つのテフィリンのバイト(箱)の周りに巻き付けます。

思い出すべきこと

テフィリンは、シャカリト(朝の)礼拝の時だけ身に着けます。伝統的には、バル・ミツヴァの年齢に達した(13歳の成人式を迎えた)男の子だけが、テフィリンを着けていましたが、バト・ミツヴァの年齢になった(13歳の成人式を迎えた)女の子も、テフィリンを身に着けることがあります。

テフィリンは、安息日や、主要な祭りの時には着けませんでした。なぜなら、休日それ自体が、神との関係を表すしるしとなるからです。テフィリンが神とのつながりを示すしるしになるのは、平日です。

タリットは、テフィリンよりも必ず先に着けます。というのは、タリットは年中毎日着ますが、テフィリンは平日にしか着けないからです。

「シェマ・イスラエル」を朝唱えるとき、「これをしるしとして自分の手に結び付け」という言葉とともに、バティーム(箱の複数形)に指をつけ、その指に口づけする人々もいます。