No.055 アブラハム契約③ 世界を祝福する使命

No.055 アブラハム契約③ 世界を祝福する使命

創世記12章3節
地上のすべての民族は、あなたによって祝福される。

主は、アブラハムの子孫イスラエルによって、すべての民族を祝福すると約束されました。イスラエルは世界の祝福の源となるのです。それがイスラエルの不変の召命であり、ユダヤ人の存在意味です。イスラエルはなぜ、無条件に祝福されるのか。それはひとえに、世界を祝福するためです。

アダム以来、罪と死の支配に苦しむ人類に神の国の祝福を回復し、滅びの束縛に喘ぐ自然界に癒しをもたらすのが、「イスラエルの民」の使命です。もちろんイスラエル人であっても、この使命を放棄すれば、主の民として役に立たない者とみなされ、裁きを受けます。しかし、「選びの民」としての地位をはく奪されることはありません。主は、そんなイスラエル人の中からでも、主に立ち返る「残りの者」を興して、祝福を世界に広げていかれます。アブラハム契約は無条件で不変だからです。

では、イスラエル(ユダヤ人)は世界にどんな祝福をもたらしているか。

まず、彼らは世界に、唯一真の創造主なる神がおられることを伝えました。

次に、その神のことばである「聖書」を届けました。さらにその聖書を通して、数々の祝福が世界に広がりました。

次いで、全人類の救い主イエス・キリストを世界に送り出しました。人類最大の祝福です。

そして、ユダヤ人を通して、聖霊が降臨され、教会が生み出されました。

また、ユダヤ人は医学、物理学、生化学、特に最近はIT関連など、様々な分野での発明・発見で、世界に貢献してきました。

現代ユダヤ人も、たとえアブラハムの神を信じなくなった人でさえ、世界を祝福するという思想を保持しています。その思想をティックン・オラムと言います。世界を贖う、つまり世界の壊れたところを修復するという意味です。実際、イスラエル国は、台風や地震などで被災した国々にいち早く医療・救援部隊を送り込んでいます。また、テルアビブのリュート・インスティテュートは、世界中のユダヤ人に「21世紀の世界改修事業」を呼びかけています。それはアラブ・イスラム諸国に対しても、農業、医療技術を提供する活動です。ユダヤ人思想家アーロン・ダヴィッド・ゴルドンによれば、「ユダヤ民族は人間の再生に献身している……これがユダヤ教の本質」(『20世紀のユダヤ人思想家』ミルトス)なのだそうです。

「我々は世界を修復するために、神の選ばれた民族である。少なくともそれを目指している民族である」と言える民族がほかにあるでしょうか。

ただ、クリスチャンは、民族としてではありませんが、教会としてそのような召しを受けています。私たちは「世界を祝福する者」としてこの地に置かれ、そして世界に送り出されるのです。「与うるは受くるより幸いなり」(使20:35)。その通り、祝福を与えることは、最大の喜びあり、主からの報酬です。祝福することが、クリスチャンの人生をそれ以上の祝福で満たすことになります。