No.056 アブラハム契約④ この地を与える
- 2020.05.04
- 三つのテーマで読む創世記(下)
創世記12章7、8節
そのころ、主がアブラムに現れ、そして「あなたの子孫に、わたしはこの地を与える」と仰せられた。アブラムは自分に現れてくださった主のために、そこに祭壇を築いた。……西にはベテル、東にはアイがあった。彼は主のため、そこに祭壇を築き、主の御名によって祈った。
アブラハム契約において、「土地」は重要です。契約で約束された「土地」とイスラエル民族は、切り離すことはできません。その土地でイスラエルの唯一神信仰は培われ、神の国の雛形が建てられ、そこから世界に神の国が広がっていくことになるからです(使1:8)。13章15節では、その土地を永久に与えると約束されています。
そこは、主がご自分の所有として特別に愛される地であり、「主が、絶えずその上に目を留めておられる地」(申11:12)です。四国ほどの狭い土地であるにもかかわらず、主ご自身が「乳と蜜の流れる地」「何一つ足りないもののない地」(出3:8、申8:6-9)と言われるほどの豊かさです。
また、アジア、ヨーロッパ、アフリカの三大陸の蝶番(中心)に位置し、神の国の豊かさとその福音が東西南北へと広がるには最適です。三大陸のつなぎ目にあるので、三大陸の動植物、文化が混じり合う地でもあります。
しかし、逆に言えば、そこは南北に通じる交通の要衝であり、大文明国にとっては戦略上とても重要な土地です。それゆえ、南はエジプト、東はアッシリア、バビロニア、西はギリシャ、ローマといった大帝国が、触手を伸ばしてくることになります。
そこはまた、偶像を礼拝する中小の民族がひしめく地でもあります。カナンの七民族、ミデヤン、アマレク、アラム、ペリシテ、アンモン、モアブ、エドムなどが、アブラハムの子孫イスラエルの前に立ちはだかることになります。イスラエルはその地を永久の所有として託されたとはいえ、自らの手でそれらの民族を聖絶し、偶像を滅ぼし、土地をきよめなければなりません。
つまり、主に信頼しなければ、この土地を獲得し、大帝国の侵略に耐えて独立を守り、繁栄し、諸民族を祝福するという務めを果たすことはできないということなのです。
しかし、将来イスラエルの民がどのような状態になろうと、そこから離散することになろうと、彼らがこの地の永遠の所有者であることには変わりありません。そして、主がこの地から世界を祝福するという計画も変わらないのです。
ところで日本は、イスラエルから見れば、アジア大陸の東の「地の果て」にある島国です。しかし、交通手段や電話、インターネットなどの伝達手段が発達した現代は、地理的にはどこの誰もが世界の中心にいると言えます。いつでも主の祭壇を築き、主の御名で祈れます(ヨハ4:21参照)。私たちも一つの「祝福の源」となって、何らかの方法で世界を祝福することができるのです。これこそが、キリストの開いてくださった神の国の喜びです。
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