No.058 祝福の契約からロトが分離……ロトの選択とアブラハムの選択
- 2020.05.11
- 三つのテーマで読む創世記(下)
創世記13章9節
全地はあなたの前にあるではないか。私から別れてくれないか。もしあなたが左に行けば、私は右に行こう。もしあなたが右に行けば、私は左に行こう。
アブラムは、兄弟ハランの遺児ロトを伴って行動していました。ロトもアブラムと共にいて、アブラムの祝福に与り、多くの家畜を所有するようになりました。しかし、主に選ばれて契約を結んだのはアブラムであって、ロトではありません。二人に別れの時が来ます。
アブラムは、両者の牧者の間に争いが生じたことで、平和裏に別れて住むことを提案しました。ロトも、自分の力で豊かになったと自信を持ったのか、同意します。伯父は甥に土地を選ぶ優先権を与えます。「あなたが左なら私は右、あなたが右なら私は左に行こう」。
なぜアブラムは、ロトに優先権を与えたのか。それは、主と祝福の契約を結んでいるというゆとり、またエジプトで主の恵みを体験して、「私はどちらの土地に行くことになっても、祝福される」という確信があったからでしょう。
ロトは、躊躇なくヨルダンのよく潤った低地全体を選びました。低地の町の繁栄は魅力的に映ったことでしょう。そこには人が切に欲するものがあります。しかしロトには、目に見えないものを洞察する信仰はありませんでした。目に見えるところだけで判断しています。伯父に対する感謝の念も感じられません。
一方、アブラムは、ロトの選択を寛大な心で受け入れ、山地のヘブロンに移り住みます。山地ですが、「主が私のために選んでくださった」という平安がありました。そこに主のための祭壇を築き、礼拝していることからもわかります。アブハムは目に見えないものを確信していく信仰を持っていたのです(ヘブル11:1)。これが「アブラハムの選択」です。まことに高貴な信仰者であり、神が「わたしの友」と呼ばれる(イザ41:8)にふさわしい人物でした。そして、結局、アブラムが見渡した土地全体が、彼の子孫に与えられることになります(14-15)。
さて、この時の土地選び方が、二人の、そして双方の子孫の分かれ道になります。主に選ばれた者は祝福の道を歩み、選ばれなかった者は自分の意志で、祝福から外れる道を歩んでいきます。アブラムは祝福の道を歩むことで、選ばれた者であることを証しし、ロトは祝福から外れていくことで、選ばれていない者であることを証明するのです。選びが結果を導き、結果が選びを証明する。同義反復のようですが、これが主の選びの真理です。次の章以降、そのことがはっきりと見えてきます。
ここで私たちが学ぶべきは、いつも相手に優先権を与え、理不尽でも甘受せよ、ということではありません。ただ、神の国に住まい、祝福を約束された者として、遠く将来を見る信仰の目を持つことです。争うぐらいなら、優先権を譲る寛大さを持つことです。主に選ばれているのに、わざわざ近視眼的になって祝福から離れるような道に進まないことです。神の国にとどまっているなら、やがて私たちは約束の祝福を手にします。神の国は私たちに心の余裕を与えてくれます。人に、「お先にどうぞ」と言えるゆとりです。
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