『イスラム2.0』飯山陽著(河出新書)

『イスラム2.0』飯山陽著(河出新書)

『イスラム教の論理』の続編です。

コーランを普通に読めば、ジハードとは「武器をとって異教徒と戦え」ということであって、単なる「信仰の努力の戦い」ではないことが、誰にでもわかります。イスラム研究者の飯山陽さんは、そのことを明確に語っています。

「ほとんどのイスラム法学者は一般信徒に対し、最も重要なジハードは自分の心の中にある弱さや悪と戦うことである、と説いてきました」。しかし、そんな解釈に啓示的根拠はほとんど存在しないし、伝統的なジハードは間違いなく、武器をもって戦う「異教徒との戦争」です。

コーラン第9章41節には、「軽装備でも重装備でもよいので出征し、あなたがたの財産と生命を捧げて神の道にジハードせよ」とあり、2章216節「あなたがたには戦争が義務付けられた」とあります。神はイスラム教徒に戦争を命じているのです(p51-52) 。実際、イスラムが勃興した7世紀以降、イスラムは剣をとっての戦いの連続でした。

今日インターネットの環境が整い、世界中のムスリムたちが誰でもコーランを自分で読み、神の法を知り、実践できるようになりました。すると、これまでイスラムとは「平和の宗教」だとか、ジハードとは「自己を研鑽する努力」だとかされてきた「当たり障りのない」イスラム教は、本来の姿ではないことがわかって来たのです。政治的に忖度して、コーランをヒューマニズム的に解釈し直してきた既存の宗教エリート・法学者(イスラム1.0)は、信用を失ってきています。日本の学者や評論家は相変わらず「イスラム1.0」の立場で、イスラムは平和の宗教と言い続けていますが。

20世紀末から、イスラムは、
①コーランを絶対的根拠とする
②コーランは、「武器をとって異教徒と戦え」と教えている
特に多神教徒、日本人は、まさにジハードの標的である
③コーランのとおり、ジハードを実行する
という方向に進んでいます。それが飯山さんの言う「イスラム2.0」です。

残虐行為を繰り返しているイスラム国や原理主義テロリストこそが、コーランに従う正統なイスラムで、平和的イスラムは自己撞着の偽物ということです。

ちなみに、キリスト教の原理主義とは、「汝の敵を愛せよ」をそのまま受け入れ、実践することです。