諸国民の父アブラハム
- 2020.06.08
- 三つのテーマで読む創世記(下)
創世記17章1—8節
「わたしは、わたしの契約を、わたしとあなたとの間に、そしてあなたの後のあなたの子孫との間に、代々にわたる永遠の契約として立てる。わたしがあなたの神、あなたの後の子孫の神となるためである。」(7)
アブラハムが体験した出来事のほとんどは、家族・一族内のプライベートなことです。民族の重大事件に関わったモーセやダビデなどとは異なります。しかし、人類の救いは、アブラハムを通して始まりました。それはひとえに、アブラハムが主に選ばれ、祝福の契約を結んだこと、そして、アブラハムが主に従い通したことにあります。
ここで、12、13、15、17章で主がアブラハムと結ばれた契約の内容をまとめておきます。
①国民の約束。子孫の数を増やし、大いなる国民とする。
②土地の約束。カナンの地を永遠の所有地として与える(12、13、15、17章)。
③王国の約束。子孫から王たちが出る。
④アブラハムは諸国民の父となる。アブラハムの名を大いなるものとする(12章)。
⑤アブラハムとその子孫を祝福する者は祝福され、呪う者は呪われる(12章)。
⑥アブラハムとその子孫は諸国民の祝福の源となる(12章)。
⑦主がイスラエルの神となられる(17:7)
アブラハム契約は、アダムの罪によって呪われた世界に祝福を取り戻し、死に定められた人類にいのちを回復する約束です。失われた神の国を再興し、その祝福を諸国民にもたらすための契約です。地上のすべての民族は、アブラハムとその子孫(イスラエル、キリスト)を通して主の祝福を受けるようになります(12:3、22:18)。主の祝福とは「永遠のいのち」を得ること、つまり唯一真の神と救い主を知ることです(ヨハ17:3)。そして、「主を知る」ことから、目に見える祝福、目に見えない祝福、人生のすべての祝福が体験されるのです。実に、この契約が旧新約聖書全体の流れを導き、歴史を方向付けることになります。
こうして、アブラハムの子孫イスラエルは、「神に選ばれた国民」「主の民」になりました。主が「祝福する神」であるように「祝福する民」となりました。イスラエルに約束された「国民」「土地」「王国」は、世界を祝福するための土台です。
また、これを契機に主はアブラムの名をアブラハムに改められました(5)。アブラムとは「高められた父」の意で、この「父」とは彼の出身地ウルの偶像神(月の神)を指しています。しかし、新しい名の意味は「諸国民の父」で、諸国民を祝福するという意図があります。そして、アブラハムはこの改名で偶像神との完全な決別を告げたのです。
さて、アブラハムは、主を信じるすべての人々の父です。私たちもアブラハムを信仰の父とし、偶像との縁を断ち切りました。
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