自分の墓が王国の礎石となった女性
- 2020.07.31
- 三つのテーマで読む創世記(下)
創世記23章
アブラハムはエフロンの申し出を聞き入れ、エフロンがヘテ人たちの聞いているところでつけた代価、通り相場で銀四百シェケルを計ってエフロンに渡した。こうして、マムレに面するマクペラにあるエフロンの畑地、すなわちその畑地とその畑地にあるほら穴、それと、畑地の回りの境界線の中にあるどの木も、その町の門に入って来たすべてのヘテ人たちの目の前で、アブラハムの所有となった。こうして後、アブラハムは自分の妻サラを、カナンの地にある、マムレすなわち今日のヘブロンに面するマクペラの畑地のほら穴に葬った。(16-19)
アブラハムとサラが後世に残したものとして、祝福の契約、イサク(イスラエル)、マクペラの墓を挙げたいと思います。それらは、もちろんアブラハムの信仰によることです。しかし、神の奇跡的な介入を直接的に味わったのは、サラのほうかもしれません。エジプトのパロやペリシテ人の王アビメレクのハーレムから救い出されたときがそうです。イサクの妊娠と出産のときもそうです。
イサクはアブラハム百歳の時の子ですが、イサクの出産はアブラハムにとっての奇跡ではありません。不妊のサラにとっての奇跡です。アブラハムはイサクが生まれた後にも、ケトラから6人もの子をもうけています(25:1-6)。サラは胎が閉じ90歳になって初めてみごもりました。主の全能を直に体験したのです。子を産めないというのは、女性にとって呪い、恥だという時代でした。しかし、サラはイスラエルの血筋を残しました。
さて、サラは、自分の墓が王国の礎石となった女性でもあります。アブラハムは亡き妻を埋葬するために、ヘテ人エフロンに銀四百シェケルという法外な代金を払って、マクペラの畑地を買いとりました。寄留者アブラハムが所有した唯一の土地です。アブラハムの妻をいとおしむ思いが表れています。
イスラエル民族にとって、マクペラのあるヘブロンはアブラハム、イサクの信仰を培った特別な土地となります。エジプトに移住したヤコブもここに埋葬されました。
その約四百年後に、出エジプトしたイスラエル十二部族の中で、ユダ族の族長カレブがヨシュアに自ら願い出て、このヘブロンの山地をユダ族の相続地とします。そして、さらに四百年余り後に、ユダ族から出たダビデがヘブロンに王国を建て、そこを拠点にエルサレムを奪い取り、イスラエル統一王国を樹立します。つまり、サラのマクペラの墓は、ダビデ王国へとつながる礎になるのです。このように、アブラハムがサラのために購入したマクペラの畑地は、子孫が約束の地を獲得する「保証金」となりました。
さらに、ダビデは主から「あなたの王国はとこしえに堅く立つ」と約束されます(Ⅱサム7:16)。そのとおり、永遠のダビデ王国が、来るべきキリストがもたらされる「神の国」の雛形となりました。
サラの信仰と祝福はサラ個人の人生では終わらず、イサクに継承され、イサクの子孫は神の民イスラエル民族となり、キリストを生み出したのです。
サラの生き方は、いかなる時代、いかなる条件下にあっても、神に忠実に歩むとはどういうことかを教えています。
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