ラバンの家での20年、主は契約に忠実であられた
- 2020.08.28
- 三つのテーマで読む創世記(下)
創世記29章-30章
それで、この人は大いに富み、多くの群れと、男女の奴隷、およびらくだと、ろばとを持つようになった。(30:43)
ヤコブは、母リベカの兄ラバンの家にたどり着きましたが、ラバンに騙されて、その姉娘のレアと妹娘ラケルの二人と結婚するはめになりました。二人は夫の愛を巡って妬み合い、子供を産むことを競って、それぞれ女奴隷を夫に与えたので、さらに複雑な家族ができてしまいました。また、舅ラバンのために20年間働かされ、その間何度も報酬を変えられるという苦痛も味わいました(31:41-42)。ヤコブの家庭に平安があったとは思えません。忍耐の歳月でした。父イサクを騙して、兄エサウから祝福を横取りした結果を摘み取る20年だったのかもしれません。
しかも、ラバンの家はアブラハムと同じ神(ナホルの神)を奉じているように見えますが、実際には、異教の影響を強く受けていました。「まじない」(30:27) 、「テラフィム」、「私の神々」 (31:19、30)という表現が出てくることから、偶像礼拝や自然崇拝、多神教に馴染んでいたことがわかります。
ヤコブも、べテルで主との出会いを体験したのち、主との強いつながりが確立していたわけではなさそうです。主の祭壇を築くこともなく、家庭内のごたごたの中で主に助けを求めて祈ることもしてはいません。主との新たな出会いはなく、己の知恵やまじない的な小細工に頼っています。ラバンの家の異教的空気に呑み込まれています。「主がこの所におられるのに、私はそれを知らなかった」(28:16)という状態に戻ってしまったようです。
しかし、それでも、ヤコブは祝福の契約の継承者なのです。主は、アブラハムとの契約、つまりべテルでヤコブに約束されたことに忠実であられました。ヤコブは忘れていても、主は忘れておられません。アブラハムもイサクも体験したように、ヤコブも無条件の祝福を体験したのです。
ヤコブは20年で、一人から大家族に成長しました。二人の妻と二人の奴隷から十一人の息子と一人の娘を得ました。祝福の契約を担う「イスラエル十二部族」の始まりです。
また、多くの家畜、男女の奴隷、財産を所有するようになりました(30:43)。ラバンにうまく利用されたようでも、しっかり主の祝福を受けています。ヤコブがラバンに、「もし、私の父の神、アブラハムの神、イサクの恐れる方が、私についておられなかったなら、あなたはきっと何も持たせずに私を去らせたことでしょう」(31:42)と語ったとおりです。
ヤコブは人格的に問題多き男です。狡猾で要領よく立ち回っても、家庭を正しく治める力には欠けています。それが、後に禍根を残すことにもなります。それでも、ヤコブは主の祝福の中にいます。それが「選ばれた者」なのです。
実は、私たちもキリストによって同じ選びを受けた者です。
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