幸いな人レア……メシアの家系を生み出す
- 2020.08.31
- 三つのテーマで読む創世記(下)
創世記29章-30章
彼女はまたみごもって、男の子を産み、「今度は主をほめたたえよう」と言った。それゆえ、その子を彼女はユダと名づけた。(29:35)
女の子が幼いころ親しむ童話の主人公シンデレラ、白雪姫、眠り姫や、かぐや姫などは、みな美人です。そして、彼女らを妬みイジメる女性は醜く描かれます。「美人に生まれたというだけで幸せの半分を手にしている」という歌の文句があります。「金持ちに」「才媛に」生まれただけで、とも言い換えられるでしょう。でも、外見の美しさやお金で得た幸せは偽りの幸せです。
「レアの目は弱々しかったが、ラケルは姿も顔だちも美しかった。ヤコブはラケルを愛していた」(29:17-18a)。姉レアは妹ラケルを嫉妬しました。主が慈しんでくださったのは、夫に愛されるラケルよりも、愛されないレアのほうでした。
レアは愛されない現実を受け入れながら、愛されようと必死でした。そして、レアはたて続けにヤコブに四人の子を産みます。レアは、長男には「主が私の悩みをご覧になった。今こそ夫は私を愛するであろう」と、ルベン、次男には「主は私が嫌われているのを聞かれて、この子をも私に授けてくださった」とシメオン、三男には「今度こそ、夫は私に結びつくだろう」とレビという名を付けました。
この名付け方に、愛されたいというレアの心の叫びを聞く思いがします。主がそんなレアを憐れまれたのです。「主はレアがきらわれているのをご覧になって、彼女の胎を開かれた」(29:31)。幸いな人とは「主の憐れみを受けた者」です。
妹と夫の愛を競うレアでしたが、四番目の子が生まれた時には、「今度は主をほめたたえよう」と、ユダと名づけました。ユダとは「ほめる」を由来にする名前です。妬みと競争心のただ中にあったとき、一瞬、心がラケルとヤコブから離れ、恵みの主に向かいました。そうして主をほめたたえたことが、レアをユダ族の先祖にしたのです。
やがて、ヤコブからイスラエル十二部族が出ますが、その中心になったのは、ラケルの子供の部族ではなく、嫌われたレアの子ユダの部族でした。ユダの子孫からダビデ王が出て王権はユダ族に受け継がれ、そしてダビデの子孫から人類の救い主イエス・キリストが誕生されることになります。ちなみに祭司のレビ族もレアの子です。現代のユダヤ人は、レアの子供たちが主体です。幸いな人とは「主をほめたたえる者」です。
ところで、アブラハム、イサク、ヤコブの族長三代の墓に、ヤコブと一緒に葬られたのもレアでした。マクペラの墓は、アブラハム三代の唯一の所有地であり、アブラハム契約の「約束の地」の土台であり、イスラエルの未来を保証する土地となりました。レアはそこに名を連ねたのです。
「私はなぜこのようにうまれたのか」と嘆き、人を妬んでも、主の祝福は受け継げません。主の憐れみを求め、主をほめたたえることが、幸いな人となる道です。
-
前の記事
ラバンの家での20年、主は契約に忠実であられた 2020.08.28
-
次の記事
先祖の国に帰れ 2020.09.04