イスラエル一族のエジプト移住とゴシェン定住
- 2020.10.19
- 三つのテーマで読む創世記(下)
創世記46、47章をお読みください。
わたしは神、あなたの父の神である。エジプトに下ることを恐れるな。わたしはそこで、あなたを大いなる国民にするから。(46:3)
エジプトの地はあなたの前にある。最も良い地にあなたの父と兄弟たちとを住ませなさい。彼らはゴシェンの地に住むようにしなさい。もし彼らの中に力のある者がいるのを知っていたら、その者を私の家畜の係長としなさい。(47:6)
ヤコブは盲目的にヨセフを溺愛し、ヨセフは空気を察せずつけあがり、兄たちは妬みに燃えて、それぞれ目が見えなくなって、悲劇を引き起こしました。しかしヨセフは、理不尽な仕打ちに耐え抜いて、自分の人生の背後には神の計画があることを悟りました。そして、エジプトと周辺の諸民族を飢饉から救い、自分を売った兄たちを赦してエジプトに迎え、まさに「祝福の源」としての務めを果たしました。苦難に耐え抜いた者から、主の恵みが豊かに流れ出たのです。
エジプトはイスラエル人にとって、異教の地、奴隷の地、下って行ってはならない地、頼ってはならない国であると同時に、一時的な逃れの地でもあり、いつかまた出て行かなければならない地です。主はイサクやエレミヤには「エジプトに下るな」と命じられ、アブラハムやヤロブアムや主イエスの家族は、一旦、エジプトに下りました。
今回は主が、そのエジプトにイスラエル一族を導かれました。そしてヤコブに、アブラハム契約を再確認されます(46:3)。すなわち、
①イスラエルと一緒にエジプトに下る、
②その地で大いなる国民にする、
③そして再び「約束の地」に連れ上る、という約束です。イスラエルの定住する所に、主も共におられ、そこを「神の国」とされるのです。
ヨセフは、イスラエル一族の移住に当たり、エジプトでも「最も良い地」ゴシェン(47:6)に住めるように図ります。エジプト人は羊を飼う者を嫌うことを知っていたヨセフは、父や兄弟たちに、ファラオの前で「職業は羊飼い」と告げるように指示しました(46:31-34)。その思惑通りに、ゴシェン定住が決まりました。こうして、イスラエル一族はゴシェンで人口増加を遂げ(47:27)、一部族から一民族に成長していくのです。
ところで、イスラエル一族は、神の国の王キリストを人類に送り出す「選びの民」です。その民が大文明国エジプトに住めば、その異教文化に同化吸収されてしまう危険性がありました。しかし、ゴシェンはエジプト人から隔離されています。ゴシェン定住は、唯一神信仰と民族のアイデンティティを守るために重要な選択だったのです。
イスラエル一族は異教の地で、「選びの民」として成長しました。エジプト人と分離され、混じり合いませんでした。それゆえに、唯一神信仰を失いませんでした。自分を知り相手を知ること、異教徒と交流しても分離されていることは大切です。四百年後の出エジプトの際も、イスラエルはゴシェンに隔離されていたがゆえに、主が下される自然災害に遭わずにすんだのです。
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