イスラエル十二部族の祝福
- 2020.10.30
- 三つのテーマで読む創世記(下)
49章をお読みください。
彼は彼らを祝福したとき、おのおのにふさわしい祝福を与えたのであった。彼はまた彼らに命じて言った。「私は私の民に加えられようとしている。私をヘテ人エフロンの畑地にあるほら穴に、私の先祖たちといっしょに葬ってくれ。そのほら穴は、カナンの地のマムレに面したマクペラの畑地にあり、アブラハムがヘテ人エフロンから私有の墓地とするために、畑地とともに買い取ったものだ。そこには、アブラハムとその妻サラとが葬られ、そこに、イサクと妻リベカも葬られ、そこに私はレアを葬った。」(28-31)
ヤコブは臨終の床で、十二部族それぞれに祝福の言葉を残します。それは各部族の将来の予告でもあります。その中で特筆すべきは、やはりユダです。主はアブラハムとの契約で、「あなたから、王たちが出て来よう」(17:6)と約束なさいましたが、ヤコブは「王権はユダを離れず、統治者の杖はその足の間を離れることはない」(10)と預言しました。つまり、イスラエルの王を輩出するのはユダ族だというのです。
面白いのは、「十一の星が私を伏し拝んでいる」(37:9)という夢を見たのはヨセフでしたが、ここでヤコブが「あなたの父の子らはあなたを伏し拝む」(49:8)と予告したのは、ユダについてだということです。ヤコブはヨセフについては、「あなたの父の祝福は/永遠の山の祝福にまさり/永久の丘の賜物にまさる」(新共同26)と、特別な祝福を告げています。ところが、イスラエルから優れた王を出し、メシアを生み出すのはユダの子孫なのです。
主の選びは不思議です。ヨセフはヤコブが愛したラケルの長子、ユダはヤコブに愛されなかったレアの四男です。ヤコブがユダを好んで「王の部族」「メシアの家系」に選んだのではありません。主がお選びになったのです。
主の選びを受けた人たちによって、神の国の計画は進み、契約は成就されます。選ばれた人たちは、弱さを露呈し失敗することはあっても、主への従いは全うし、自分の役割を果たします。それが契約の民イスラエルです。
ところで、アブラハム、イサク、ヤコブは地上にあっては寄留者でしたが、「約束の地」カナンで所有した土地が二か所あります。一つは、アブラハムがヘテ人エフロンから買い取ったマクペラにある畑地です。アブラハムはその土地のために、銀400シェケルという法外な代価を払いました(23:17-20)。もう一つは、ヤコブがハモルの子らの手から100ケシタで購入したシェケムの野の一部です(33:19)。主は、カナンの地をアブラハムの子孫に永久に与えると約束されましたが、アブラハムとヤコブが取得した土地は、やがて全土を所有する「保証金」のようなものになりました。
ヤコブは、息を引き取る直前、自分の遺体を父祖の地にあるマクペラの墓に葬るようにと、子供たちに言い残します(29:32)。その墓にはアブラハムとサラ、イサクとリベカ、そしてユダの母レアが眠っています。ヤコブは、「神はおまえたちとともにおられ、おまえたちを先祖の地に帰してくださる」と確信していました(48:21)。先祖と共に横たわり、アブラハム契約が成就する日を見届けたいと願ったのでしょう。マクペラの墓は、アブラハム契約が成就する日の保証です。
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