ステーション13 イエメン(中)
- 2020.08.19
- アブラハムの子供たち
学びの進め方
ステーション・リーダーとなった人とアシスタントは、イスラエルに移住したイエメン人の役になります。子供たちに質問をしたり、発言してもらったりして、楽しい雰囲気を作ります。子供にも役を演じてもらい、楽しい劇もできるといいですね。
生徒たちを温かく迎え、床に座らせます。イエメンのユダヤ人の歴史を簡潔に説明し、イスラエルに飛行機で運ばれたときの経験を詳しく話します。子供たちはきっとこの話に引き込まれるでしょう。「私は、聖書に約束された地に住みたいと、ずっと願っていたんだ。だから、イスラエルに運ばれてきてとっても嬉しかったよ。イエメンでは、原始的な生活をしてきたので、飛行機に乗ったり、電灯をつけたり、電話で話をしたりすることなどに、とても驚いたよ。イエメン出身のユダヤ人はみんな、そのような経験をして、今日、イスラエル社会の一員になっているのだよ」と説明してください。
イエメンでの生活は時にすごく困難だったけれど、イスラエルの祭りや結婚式はみんなでお祝いし、喜びに心が踊ったことを話します。また、ユダヤ教が結婚と家庭生活に高い価値を置いていることにも触れてください。
希望する女の子と男の子ひとりずつに前に出てもらい、主イエスの時代からの結婚式の習慣を再現してみてもいいでしょう。そのいくつかは、今日のイエメン出身のユダヤ人の共同体でも続いています。
結婚の習慣を模擬的に演じてみます。
男性スタッフが求婚するユダヤ人男性役、女性スタッフが求婚される女性役を演じます(差し障りのない人同士にする)。まず、男性は女性の父親役の男性のところへ行き、結婚の許可を求めます。父親は娘に、結婚することに同意するか、確かめます。同意したなら、父親と求婚者との間で話し合い、花嫁料(花婿が花嫁の父親に支払うお金)と持参金(父親が娘に持たせるお金)を決めます。金額を値切ったりして、合意できるまで話し合います。
合意ができれば、婚約式を行います。婚約式は、花嫁側の家で行われます。花嫁の父親は、花嫁役と花婿役を立たせ、自分と求婚者が同意した条件を述べ、花嫁と花婿がその条件にちゃんと同意していることを確認します。そして、1つのカップからワインを飲む演技をして、婚約式を閉じます。これによって、両者は婚約したものとみなされます。婚約は、まだ結婚をしてはいませんが、互いのために正式に取り分けられたことを意味します。よって、婚約を解消することは離婚とみなされます。
この後、花婿は自分の父の家に戻り、花嫁のために新居を準備しなければなりません。畑を作り、穀物を植え、父の家に部屋(お金持ちであれば複数の部屋)を作ります。すべてを完璧に準備しなければなりません。新婚の1年間、花嫁に全エネルギーを注ぐためです。早く結婚の日を迎えたい花婿は、準備が完璧に整ったことを、自分の父親に確認してもらいます。大切なことを見落とし、準備万端でないまま花嫁を迎えることがないようにするためです。準備が十分にできたと父親が判断したら、息子に、結婚すべき時が来た、と伝えます。
その間、花嫁は手に入る一番美しい花嫁衣裳を準備して、花婿が来るのを忍耐強く待ちます。二人の女の子を付添人として用意し、素焼きのオイルランプか、ろうそくを持ってもらいます。ろうそくを使う場合は、イエスの時代には、素焼きのランプや、油に浸した布を棒につけた松明(たいまつ)を、花嫁の付添人が運んだことを説明してください(ピクチャー・カード8に、オイルランプについての情報があります)。付添人は常に花嫁のそばにいて、準備を手伝い、花嫁が焦る気持ちで寂しくなったりするときに励まします。花婿の到着を知らせる声がしたら、付添人はすべての準備が整っているか確かめます。花婿が夜に到着した場合のために、ランプに油を入れておくことも準備の一つです。
ついに結婚式の時が来ました。2人の男の子を呼び、楽器を演奏し、花婿に付き添わせます。花嫁の居所に近づくと、楽器を大きくかき鳴らします。花嫁と付添人はその音で花婿が到着したことを知ります。付添人は花嫁を素早くベールで覆い、一緒に門のところに走って花婿とその一行に加わります。結婚式は夜間に行われるので、付添人はランプを忘れないようにします。様々な音、踊り、歌とともに、一行は花婿の家へと進みます。家ではすでに、婚宴の食事が準備されつつあります。ここで花嫁と花婿はついに一緒になり、パーティーは7日間続きます。
さて、イエメンのユダヤ人役のリーダーは、生徒に話しかけます。
イエスは、結婚の慣習を何度も引き合いに出されています。実は新約聖書は、教会を花嫁に例えているのです。イエスはこの地に来られて、花嫁のために花嫁料を支払われました(エペソ5章)。ご自身の血で教会を花嫁として買い取られ、それから父の家に戻り、今、花嫁のための場所を準備しておられます。準備ができたことを父から聞いたら、イエスは花嫁を迎えに戻って来られます。その間、花嫁は忍耐強く花婿イエスを待ち、忠実と純潔の衣装を準備しなければなりません。イエスがついに迎えに来られるとき、花嫁は喜びをもって花婿に会い、花嫁を父の家に連れて行き、永遠に一緒にいることになるのです。使徒たちや初代教会のユダヤ人信者たちは、当時の結婚の慣習に馴染んでいたので、とても理解しやすい教えだったと思われます。この例えは心に迫ったことでしょう。
雰囲気づくり
布やシーツを背景として壁に張り、小さなテーブルを置いて明るい色の布をかけます。教材や小道具はその上に置きます。
少し香を焚(た)き、ライトを少し暗くして、夜の雰囲気を出します。
衣装
男性は白とグレーの縞模様の布でできた、くるぶしまで届く長袖のチュニックを着ます。ベルトは締めず、裸足になります。小さな黒の縁なし帽子(キッパ)があれば、かぶってください。女性は明るい色でかかとまでの長さのチュニックを着て、裸足になり、模様がなく暗い色合いの布を頭にかぶります。カラーテープで縁どりをしてもいいでしょう。大きなイヤリングとネックレスを何重にも着けます。
イエメンの花嫁が着るベールを作りましょう。
模様のない布を2メートル準備します。黒、暗い緋色、紫などの、暗い色の布がいいでしょう。ミシンや接着材を使って、同じ2メートルの長さの縁飾りを付けます。この飾りが花嫁の顔にかかります。花嫁の耳にかかる部分2か所に、印を付けます。長さの異なるひもを数本、そして飾り用のコイン、ビーズ、鈴、小さな房飾りやタッセルを2つずつ用意し、印を付けた部分に接着剤で付けます。花嫁の頭にかけたとき、縁飾りは花嫁の鼻まで届き、ひもは肩まで届くようにします。
楽器
太鼓、タンバリン、笛を用意します。スポンジで色をつけた段ボール箱などで太鼓を作ったり、空の容器に乾燥した豆を入れてマラカス風楽器にしたりしてもいいでしょう。
ピクチャー・カード7 楽器
聖書には、音楽、楽器、歌、踊りなどについて多くのことが書かれています。主に向かって、喜びの音を捧げるように言われているのです。写真は、荒野の生活で使われていた楽器であり、アブラハム、イサク、ヤコブの天幕にあったものを再現してあります。古代と同様、今日の砂漠でも、リラックスの時間には、木に寄りかかって座り、濃いコーヒーかお茶をすすり、一弦バイオリンのラババのメロディーに合わせて歌う詩に、耳を傾けます。一方、祝日や結婚式、隣人や知らない人が訪ねて来たら、お祝いの時間です。古代の伝統を守り、おしゃべりと踊りが一晩中、時には数日にわたって、続きます。
踊りと歌のために奏でる中東の楽器は、太鼓の一種であり、数千年前も今も変わらず人気があります。この太鼓は中東地域全体で用いられるもので、陶器でできており、牛ややぎの皮が張られています。エジプトでは、タブラと呼ばれます。トルコでは、同じスタイルの太鼓がアルミニウムか真鍮で作られ、古代ペルシャでは木で作られ、ザルブと呼ばれました。写真の太鼓はイスラエルのもので、ドゥンベックと呼ばれます。太鼓の音はどの国のものでも特徴的で、指先、手のひら、爪さえも使って演奏し、非常に多様な音の組み合わせで奏でることができます。
小さな太鼓は、大人だけでなく子供も使います。持ち手を手のひらに挟んで転がすようにして演奏すると面白い音が出て、手の動きを速くしたり遅くしたりすることで音を変えることができます。
リード楽器は、現在も使われている楽器の中で最も古いものです。その起源は知られていませんが、非常に古い時代から使われていたことが歴史的記録から分かっています。1つ、あるいは2つのリードがついた笛は、中東地域で今でも、大人にも子供にも使われており、羊飼いの笛と呼ばれています。耳に残るその音は、ドゥンベックのリズムに非常に良く合い、喜びの音を上げ、踊り子たちはそれに合わせて回りながら踊るのです。
ピクチャー・カード8 オイルランプ
陶器は、イスラエルや中東地域の発掘作業で、最もよく出てくる遺物のひとつです。ランプや水差し、花瓶などの陶器は、完全な状態で出てくることもありますが、多くの場合、年月の重みによって壊れてしまっており、現代の考古学者が復元しなければなりません。しかしながら、ほんの小さな陶器のかけらでも、考古学者にとって価値があります。なぜなら陶器によって、発掘場所の年代を非常に正確に特定できるからです。陶器の様式、材料となっている物質の組成、焼き方や装飾の仕方を判別することで、科学者はそれがどの年代のものかをとても的確に言い当てることができます。考古学者は、このように陶器のかけらを調べることで、発掘している層全体が古代文明の中でどの時代に当たるのかを算定し、明らかにすることができるのです。
中東地域で発掘される陶器の遺物の中で、最もよく出てくるのは、オイルランプです。装飾の仕方だけでなく、形や、油を入れる穴のサイズから、そのランプの年代が分かります。写真にあるのは、主イエスの時代のランプを模して作ったものです。イエスさまの家にはおそらく、このようなランプが数十個あり、子供のときには母親のランプ作りを手伝ったのではないでしょうか。もし裕福な家庭に生まれていたならば、この写真にあるように、同じ形でも真鍮などの金属でできたものを持っていたことでしょう。
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