ステーション13 イエメン(下)
- 2020.08.26
- アブラハムの子供たち
友の献身
タルムードによると、互いにふさわしいユダヤ人男女が結婚するとき、エリヤが彼らに口づけをします。それは、神が二人を愛し、共にいてくださることを意味しています。また、神の子供たちがともに調和して生きることで、メシアの到来が早まるのです。次の物語は、そのことを語っています。
ある2人のユダヤ人少年が一緒に成長しました。大人になると、ひとりはローマで、もうひとりはシリアで生活するようになりました。ある日、ローマのユダヤ人がシリアの友人を訪ねると、スパイとして捕らえられてしまいました。王は死刑を宣告しましたが、彼はローマに戻ってなすべきことを終わらせてから、シリアに帰って来ると約束しました。
王は笑い、この男をローマに去らせたら二度と戻らないだろうと言いました。ところが、シリアの友人は、彼が戻ってくることを信じ、「友が戻るまで私が牢獄に入ります。もし、定められた時間に戻ってこなかったら、私を死刑にしてください」と申し出ました。
王は、友のために死ぬ者がいることに驚き、その申し出を受け入れました。ローマの友人は家に戻り、なすべきことを終わらせ、シリアへの帰途につき、船に乗ります。しかし、不運にも海で嵐に遭い、定められた時間に遅れてしまいます。
シリアでは死刑執行人が監獄の友人を上機嫌で呼び出し、「友情を信じるなんて愚かな奴だ」とあざけりました。ところが、まさに絞首刑が執行されようとしていたそのとき、ローマから友人が戻り、人込みをかき分けて、叫びます。「わが友を絞首台から降ろせ。私が死刑になる時だ」。
ふたりは抱き合い、どちらが死刑に処せられるかで口論を始めました。「僕が判決を受けてここにいるのだ。僕が死刑になる」とローマの友人は言い、「君は時間通りに来なかったら、僕が死刑になるはずだったんだ。僕が死刑になる」とシリアの友人も譲りませんでした。
死刑執行人は訳が分からなくなり、王に審判を求めました。王は、ふたりが互いを心から大切に思い愛し合っていることに感銘を受け、1つの条件で両者を解放することにしました。その条件とは、王が彼らの後見人になることです。
神は、互いに献身し合っている夫と妻を、このように見ています。夫婦が互いに献身するとき、神が後見人となり、その結婚がうまくいくようにしてくださいます。
知っていましたか
- イエメンのほとんどの学校は、本を1冊しか買えなかったので、子供たちは授業中、本の周りに輪になって集まりました。その結果、彼らは正面からだけではなく、逆さまでも左右どちらからでも本を読めるようになりました。
- イエメンのユダヤ人がイスラエルへ移住したとき、大人の平均体重は39kgでした。
- 1948~50年、イスラエル政府がイエメンのユダヤ人を飛行機でイスラエルへ運んだとき、彼らはそれまで飛行機を一度も見たことがなかったにもかかわらず、怖がることはありませんでした。出エジプト記19章4節の主の言葉を思い出したからです。「あなたがたは、わたしが……あなたがたを鷲の翼に載せ、わたしのもとに連れて来たことを見た」。
- なぜ花嫁の衣装は白なのか知っていますか。この習慣はユダヤ人の伝統から来ています。男女が結婚の誓いをするとき、彼らは罪がすべて赦され、新しく造られた者として人生を始めます。それを白の衣装が表しているのです。
- ヤコブは初めてラケルに会ったとき、彼女に一目ぼれし、妻に迎えたいと願いました(創世記29章)。彼はラケルと結婚するために、ラケルの父ラバンのために7年間働きました。しかし、当時、その地域では、長女が先に嫁がなければならないという慣習があり、父ラバンは長女のレアをまずヤコブの天幕に送ったのです。ヤコブは知らずにレアと夫婦の契りを交わしてしまうことになりました。哀れなこの男は、最初に愛したラケルと結婚するために、また7年働かなければなりませんでした。
今日、ユダヤ人の結婚式には、「花嫁にベールをかける」という儀式があります。式が始まる前に、花婿とその仲間は、花嫁とその付添人たちが待っている部屋に入ります。この女性が本当に花嫁にしたい人であることを自分の目で確かめたあと、花婿は自分の手で花嫁にベールをかけます。ヤコブのような経験をしないためです。
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