ステーション19 現代のイスラエル(下)
- 2020.12.09
- アブラハムの子供たち
教えるための情報
イスラエルを旅することは、ユダヤ人にとってもクリスチャンにとっても、人生を変える体験となります。イスラエルが復興して以来、この小さな国が直面してきた大きな政治的、社会的問題にもかかわらず、この地の空気には希望と活気が満ちています。街には、ビジネススーツを来た現代のイスラエル人、鬢(びん)を伸ばした髪型に黒い帽子をかぶった正統派ユダヤ人、眉にピアスをした若者たち、ゆるやかな外套を着たキリスト教の聖職者などがいます。教会の鐘が鳴り、ムスリムのミナレット(モスクの尖塔)から祈りの時間を知らせる呼びかけが聞こえたかと思えば、羊飼いが羊を連れて道を横切るのをイライラと待っている車もいます。だれもが急いでいるように見えながら、ここでは、時が止まっているかのような感覚があります。
イスラエルは非常に小さな国で、南北480km足らず、東西の幅は最も広いところでも80kmしかありません。頂上に雪をかぶった北のヘルモン山から、太陽がさんさんと照る南のエイラートの海岸まで、車で数時間しかかかりません。道の途中、この素晴らしい土地は驚きで満ちています。太陽に輝く青々とした緑の谷、川、湖が続き、その周囲にはオリーブやアーモンドが豊かに実る土地があります。荒野の先には深い森が続き、ところどころにヤシの木やオアシスがあります。熱帯雨林さえ見ることができるのです。北に行けばコートが必要で、ガリラヤ湖では半袖、エルサレムではセーター、そしてエイラートでは水着が役に立ちます。そして、それらの地はたった半日で回れる範囲にあります。
イスラエルに行かれたときは、イスラエルの動物150種類、鳥380種類、植物3000種類を収めるために、カメラを忘れないでください。ミネラルに富んだ死海の水から、きらきらと輝く地中海の海岸まで、神の選ばれたこの土地には、あらゆる種類の気候と生態系を見ることができます。いわば、地球全体の縮図を見るような感じです。また、それでも足りないかと言わんばかりに、2万平方kmの土地には、数千年前から暮らす古代民族の末裔(まつえい)で満ちています。アブラハムからダビデ、ソロモンからイエス、そしてパウロから十字軍まで、それぞれの時代に生きた民族や遺跡が、日常生活や文化にあふれているのです。
イスラエルの地は聖書の秘密を解き明かす鍵です。その地は、今日のキリスト教と初代教会時代のキリスト教の間をつなぎ、さらにはキリスト教の起源であるユダヤ教をもつないでいるからです。オリーブ山、神殿の丘、園の墓、ガリラヤ湖、山上の垂訓の丘、カペナウムの遺跡は、聖書時代をよみがえらせてくれる最高の場所です。この50年もの間、考古学者が時間と労力を注いで研究したおかげで、聖書の記録を裏付け、真実を証明するような遺跡や遺物が、数えられないほど発見されました。しかし、その中でも最も心躍る成果は、イスラエルの学者らによる研究が、キリスト教とユダヤ教のつながりをはっきりと示したことです。クリスチャンの学者たちも、タルムードなどのユダヤ教の文献を研究し、イエスの時代の生活様態を明らかにしたので、新約聖書の歴史的背景を理解しながら、イエスの生と死について考えることが容易になりました。
エルサレムやテルアビブの市街の標識は、4つの言語で書かれてあります。ヘブル語、アラビア語、英語、そしてロシア語です。行き交う人々は世界中のすべての言語を話しているかのようです。それは驚くべきことではありません。イスラエルには毎年、世界中の国々から200~300万人の旅行者が訪れるからです。そしてイスラエルに住む人々も、実に世界の全大陸から来た人々です。建国当時70万程度だった国民は、今や900万人を超えています。最も多いのは移住してきたユダヤ人です。そのほとんどが、当初は食べるにも困るほどの状態で、ヘブル語の知識もありませんでした。病気の人や高齢者もいて、イスラエルで仕事を得るのが難しい状態でした。しかし、彼らはみなイスラエルを愛して、出身国の文化を持ちよりました。それが、地球上で最も多様な社会を作り上げ、ユダヤ教の美しさとシオニストの夢に加えて、様々な伝統、文化、言語を織り込んでいったのです。
学びの進め方
生徒たちが教室に入る時、イスラエルの音楽を流します(この章の終わりの「音楽」のところに載っています)。「シャローム」と挨拶をしながら生徒たちを温かく笑顔で歓迎します。
挨拶のあと、イスラエルは多くの点でユニークな国であることから始めます。例えば、国の始まり以来、何度も戦争状態に陥ってきたのに、それでも「平和(シャローム)」を挨拶にしています。そんな国はイスラエルだけです。しかし、シャロームは、ただ単に平和を意味するだけではありません。この言葉を言うときには、健康、完全、繁栄、幸福など、神が良きものを相手に与えられるように祈るのです。
今日のイスラエルでも、互いの頬に口づけすることが挨拶のひとつです。パウロが兄弟姉妹たちに、「聖なる口づけをもって互いにあいさつを交わしなさい」(第二コリント13:12)と教えているのは、おそらくこの挨拶のことです。
生徒たちに、イスラエルについてどんなことを知っているか、もし旅行したら何が見られるかを質問し、その答えをホワイトボードに書いていきます。その上で、イスラエルがどのような地であり、いかに多様性に富んでいるかを伝えます。そして、イスラエルがユニークなのは、神がご自分の御名を永遠に置くために選ばれた土地だから、という理由に尽きると教えます。
次に、イスラエルにはどんな人々が住んでいるかを質問し、出た答えを書いていきます。大多数はユダヤ人だけれど、背の高い人も低い人も、痩せている人も太っている人もいるし、肌が黒い人も白い人も、青い目の人も茶色い目の人もいるし、そばかすのある人もいるし、様々な人たちがいることを伝えます。
次いで、聖書にはイスラエルの地について何と書かれているかと質問し、この章の最後に挙げられている聖句のいくつかを朗読します。そして、神が聖書の約束をどのように成就してこられたか、説明します。2000年もの間離散していたユダヤ人が祖国イスラエルに帰還できたことは、歴史的な奇跡です。帰還し始めたのは19世紀の終わりごろですが、イスラエルの地は痩せ、木はほとんどなく、砂漠と湿地帯が占めていました。しかし、郷土を回復したいと強く願う帰還者たちは、それに屈することなく、1億5千万本もの木を植え、湿地を排水し、砂漠を灌漑し、花咲く美しく生き生きとした農地に変えたのです。ユダヤ人は、彼らが意識するにしろしないにせよ、地を生き返らせる神のパートナーなのです。
さらに、聖書の中で好きな話は何か、その登場人物、出来事、場所について質問します。今日も、その場所には訪ねることができると伝え、地図でその位置を確認します。床にマスキングテープで地図を描き、生徒にそれぞれの場所に「なりきって」もらうのもいいでしょう。都市は立ち、村はしゃがみ、湖は座り、山は手を頭の上に挙げて立ち、川は寝そべります。それは「生きた」地図です。
最後に、生徒たちに、ユダヤ人から何を受け取ったか、考えさせます。聖書、唯一なる神、預言者、契約、メシア、そしてイスラエルの土地です。その一つ一つに、どれほど感謝するべきか、語り合わせます。ユダヤ人は神の契約の一部であり、神は永遠に彼らの神であり、イスラエルの地は永遠に彼らのものであることを再確認します。終わりに、詩篇122:6~9を朗読し、エルサレムの平和、そしてイスラエルの国の繁栄のために、生徒と一緒に祈ります。
また、シャローム・ハヴェリムというユダヤの民族音楽か、ハティクヴァ(希望)と呼ばれるイスラエルの国歌を教えてもいいでしょう。この章の後ろに楽譜があります。
終わりに、生徒に祈りのカードを1枚ずつ渡します(章の後ろに、祈りのカードの作り方があります)。
雰囲気づくり
このステーションはできるだけ目を引くものにします。青と白の風船、薄紙の吹き流しを飾り、イスラエルの写真やポスターをたくさん貼ります。壁にはダビデの星、鳩、メノラー
(ハヌカなどで用いる7本か9本枝の燭台)を、模造紙に描いて切り抜いて貼ります。天井から吊り下げてもいいでしょう。CDのプレーヤーも忘れずに準備します。
イスラエルの地図を壁の一番よく見える場所に貼ります。なければ、インターネットから地図をダウンロードして、拡大コピーして掲示します。聖書地図を拡大コピーしてもOKです。蛍光ペンやマーカーを使って、聖書の話が起こった場所にできるだけ多く印を付けます。また、教室の一角に、マスキングテープで4~4.5mほどのイスラエルの地図を再現します。
教室の入り口にテーブルを置き、祈りのカードを置きます。
衣装
青と白の服で、少しドレッシーな感じのカジュアルな服装をお勧めします。
音楽:ハティクヴァ
音楽:シャローム・ハヴェリム
次の音楽の中からひとつ、CDを準備してください。
・The Burning Bush(イスラエル音楽を演奏するバンド)のCD『Folk Songs from Israel』
・The Burning BushのCD『Raisins and Almonds』
・MC labelの様々なアーティストが歌っている、『The Very Best of Israel』
これらのCDは、amazon.comなどで注文することができます。
食べ物
インターネットでレシピを検索して、イスラエルのおやつを作ります。プレゼント用の袋かサンドイッチ用のビニール袋、青と白のカールしたリボンを用意し、おやつを袋に入れ、口をリボンで飾り付けをして、生徒に1袋ずつ渡します。
イスラエルの祈りのカード
「エルサレムの平和のために祈れ」(詩篇122篇6節)と書いた祈りのカードを、無地の紙(白でも色付きでもOK)にコピーします。切り取って、生徒に1枚ずつ持って帰らせます。
約束
聖書の中で、神はご自分の民イスラエルについて、多くの特別な約束をくださいました。主は、民を地の果てまで散らされましたが、今は、アブラハムに与えると約束された土地に、連れ戻しておられます。私たちの神は、いつも、ご自分の約束に忠実な方です。
契約
「主はアブラムに言われた。『あなたは、あなたの土地、あなたの親族、あなたの父の家を離れて、わたしが示す地へ行きなさい。そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとする。あなたは祝福となりなさい』」(創世記12:1~2)。
「さあ、目を上げて、あなたがいるその場所から北、南、東、西を見渡しなさい。わたしは、あなたが見渡しているこの地をすべて、あなたに、そしてあなたの子孫に永久に与えるからだ」(創世記13:14~15)。
エルサレム
「わたしはエルサレムを創造して喜びとし、その民を楽しみとする。わたしはエルサレムを喜び、わたしの民を楽しむ。そこにはもう、泣き声も叫び声も聞かれない」(イザヤ書65:18~19)。
「エルサレムは、真実の都と呼ばれ、万軍の主の山は、聖なる山と呼ばれる」(ゼカリヤ書8:3)。
神の守り
「わたしのことばをあなたの口に置き、この手の陰にあなたをかばい、天を置き、地の基を定め、『あなたはわたしの民だ』とシオンに言う」(イザヤ書51:16)。
「ヤコブの家よ、わたしに聞け。イスラエルの家のすべての残りの者よ。胎内にいたときから担がれ、生まれる前から運ばれた者よ」(イザヤ書46:3)。
「主は約束どおり、ご自分の民イスラエルに安住の地を与えてくださいました。しもべモーセを通してお告げになった良い約束はみな、一つも、地に落ちることはありませんでした」(第一列王記8:56)。
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