ステーション23 キブツ

ステーション23 キブツ

教えるための情報

イスラエルはユニークな国です。小国ながら壮大な国です。苦難の中で誕生し、ユダヤ人の故郷の建設を目指すシオニストによって育ち、世界中から帰還した何百万というユダヤ人移住者の労苦と熱情によって維持されてきました。移住者たちは、理想の実現のために喜んで人生を捧げたいと願ったのです。離散ユダヤ人は、様々な国々で、様々な歴史を通り抜けてきました。この類を見ない多様性を持つ国民を一つにまとめ、国家を成り立たせるために、様々な試みがなされました。その中で最もユニークで、かつ効果を発揮したのが、自発的な共同体「キブツ」です。キブツによってイスラエルは大きな成長と発展を遂げました。

キブツは、通常、農業を営む共同生活組織で、メンバーはすべてのものを分かち合います。社会正義、平等、個人の労働の尊厳などを原則とし、各メンバーは、個人的な富ではなく、共同体や国家を築き上げるために働きます。すべての所持品と財産をキブツに渡し、共同体に仕えます。その上で、共同体は、住居、医療、教育、経済的支援、休暇、お小遣いなど、個人の必要のすべてを提供するのです。

初期のキブツは、イスラエル再定住した若い開拓者たちによって作られました。故国再建に身を捧げたこれら定住者の群れは小さいものでしたが、関係は密で、大きくなった家族のようでした。最初のキブツであるダガニャが作られたのは1909年で、10年後の1918年には29のキブツを数えるまでになりました。第一次世界大戦後、移住者は爆発的に増えて、キブツの理念も深まりを見せました。1948年の独立時には、291あったユダヤ人共同体のうち、キブツは実に149を占めるほどになったのです。その一方で、親密な農業共同体だったキブツは、農業と工業を組み合わせた自給的な大きな村へと変化していきました。

キブツは、それぞれ独自の理念や目的を持っていました。単なる共同生活だけではなく、トーラーの実現を掲げる宗教的共同体もあれば、政治的信条や、特定の社会的規範を守ることを目指す共同体もありました。初期には、防衛だけを目的とした共同体もありました。

しかし、目指す理念や目的は異なっても、キブツは、ユダヤ人の生き残りをかけた経済的、政治的、文化的、防衛的な組織の先駆けとなりました。その意味で、キブツは重要な役割を果たしたのです。メンバーは、出身国、文化、世界観さえ異なる人々でしたが、イスラエルを建国するという夢を共有していました。キブツはその人々をまとめていったのです。

現代のキブツは、初期のキブツと同じように、一緒に生活し、働き、家族の養育を支援する環境が整備されています。共同食堂、ランドリー、共同経営の洋服屋が、今でもあります。訓練されたケアワーカーが世話をする施設に、子供を入れることにこだわる親もいます。そうした施設では、子供たちは一緒に食事し、昼寝し、勉強し、働き、年齢に従って卒業していくのです。親は子供たちを頻繁に訪れ、夕食の時間や安息日となる週末には、居住区に連れて帰ります。一方で、伝統的な家族生活をするために、この制度をやめたキブツもあります。メンバーの仕事や奉仕の割り当てを増やすキブツもあれば、働く人が賃金を受け取るという民主的なシステムを取り入れたキブツもあります。

その後、「キブツ連合」が生まれました。それは共同体により多くのものや、より良いサービスを提供することに取り組むキブツの組合です。子供のための特別なサービス、心理的にサポートをするサービス、キブツだけでは生活できない高齢者のための医療や割り当て金は、共同体よりも連合から支給されます。合唱団やオーケストラの活動なども、この協同組合が出資します。各種の大人のための教育プログラムに加え、技術、農業、キブツ運営習得コースを、若者のために用意するキブツもあります。キブツ大学を作ろうとしている連合もありました。

キブツ運動が将来どうなるか、誰にも分かりません。多くの若者が大学に進学するために、あるいは職業のキャリアを積むために、キブツを離れています。そのためキブツの将来が不透明になっています。しかし、共同体がこの先どうなろうと、イスラエルと世界は、キブツに身を投じ労した人々に多くのものを負っており、彼らに心から感謝を捧げるべきです。彼らは、ユダヤ人の安全な避難場所、ユダヤ人の故郷を作るというシオニストの夢を実現させるために、犠牲を払った人たちだからです。

学びの進め方

進め方1

参加者を「シャローム」の挨拶で部屋に招き入れます。まず、「キブツという言葉を聞いたことがあるか、尋ねます。キブツは、ヘブル語で「集まり」を意味すると教え、自分がキブツでどのような生活をしているか話します。共同体の生活、共同体の食事、子供たちの家、などについてです。生徒たちに、自分の生活とあなたの生活を比べさせます。

次に、イスラエルの建国においてキブツ運動が果たした役割は大きく、キブツを通して、聖書の預言の多くが成就されたことを説明します。イスラエルは20世紀初頭、土地の多くは荒れ果て、沼地になっている地域もありました。2000年来、多くの国々がイスラエルを征服しましたが、土地から収奪するだけで、森林のほとんどを伐採してしまったのです。

イスラエルの地は、神がご自分のものとして選び、永遠に御名を置かれた所です。その地を与えられたユダヤ人は、2000年近く世界中に離散していましたが、19世紀の終わり頃から少しずつ帰還し始め、1948年に国を再建しました。これは、エゼキエル36:23~24、30、アモス9:14、イザヤ41:18~2の預言の成就の始まりでした。そして、キブツ運動を通して劇的な変化がもたらされたのです。

イスラエルは特殊な灌漑技術を開発しました。水をスプリンクラーで空気中にまき散らすのではなく、乾いている植物に集中して与えるという技術です。これは非常に効率的なシステムで、世界中の国々から見学者が来るようになりました。この灌漑のおかげで、荒れ果てた土地でも野菜、果物、花々が育っていったのです。ガリラヤの沼地に定住した初期のキブツニク(キブツのメンバー)は、怒れる近隣のアラブ人をなだめつつ、マラリア蚊の駆除に苦闘し、湿地を耕作地に改良しました。今や、国中で最も美しく肥沃な土地に変貌しています。

また、1948年から、キブツの人たちを中心に植樹運動が始まり、数百万本もの樹木が植えられました。現在、多くの丘が聖書の時代と同じように、深く美しい森に覆われています。

さて、生徒たちにそう説明した上で、「キブツの活動に参加して、花を植えませんか」と誘います。テーブルの周りに座らせ、発砲スチロールの鉢に花や種を植えてもらいます。鉢に名札を付け、家に持って帰ってもいいでしょう。

進め方2

進め方1と同じようにキブツについての話をしますが、鉢植えの活動に十分な時間が取れるようにしてください。この進め方は、屋外に出て活動します。そして、小さな花や種を植えるのではなく、木を1本植えましょう。植木屋で木を購入し、注意書きをよく読みながら、あなたの庭か教会の敷地内に木を植えます。全員が何らかの作業に参加できるようにしてください。土を入れる作業でも、水をやる作業でも結構です。そうすればこの木は、みんなで力を合わせたことのシンボルになります。水と石鹸、ペーパータオルを準備しておいて、家や教会の中に戻る前に手を洗いましょう。

雰囲気づくり

進め方1

部屋にテーブルだけを準備し、キブツの作業所のような感じにします。テーブルは新聞紙で覆い、シャベル、熊手、かまなどの園芸用具を置きます。「教えるための情報」にある貼り紙(子供の家、洗濯所、食堂など)を使って雰囲気を出すのもいいでしょう。貼り紙は明るめの色紙にコピーして、部屋の中に吊り下げます。そして、リーダーの話が終わったら、生徒をテーブルに移動させ、花を植えます。

発砲スチロールの鉢、マリーゴールドなどの小さな植物や種、土を準備し、各自が何かを植えて、家に持ち帰るようにします。水を入れたバケツや小さなじょうろを準備し、まいた種や植物に水をやります。

進め方2

外で活動するので、シャベル、熊手、くわなどの園芸用具、そして水を準備すれば十分です。最後に手を洗う石鹸、ペーパータオルを準備しておきます。

衣装

リーダーもアシスタントも、ごくカジュアルな服装でいてください。夏なら短パンかジーンズにTシャツ、あるいは作業着でもいいです。虫よけスプレーも準備します。帽子はつば付き、靴は運動靴にします。