創造主が万物の基準 vs 人間が万物の基準⑤

創造主が万物の基準 vs 人間が万物の基準⑤

Ⅱ 人間が万物の基準である(2)

では、人間が万物の基準となっていく過程を、聖書がどう語っているかを見ていきます。 

2)創造主が定めた基準の破壊

自分自身を基準にして生きるようになった人間は、創造主を基準とするあり方を破壊していきます。

①人間の命の尊厳の破壊

まず、神が定めた「人間の命の尊厳」が損なわれます。アダムの子カインが妬みと怒りに突き動かされ、弟のアベルを殺したのです。最初の殺人です(創世記3章)。

そして、カインの子孫レメクが「傷を受けたら人を殺す。七十七倍の復讐をする」と、殺人の肯定と復讐の原理を宣言するに至ります(同4章)。

人間が、人間を基準にするようになったことで、人を殺してはならない客観的な理由は失われました。創造主が人間を「神のかたち」に造り「尊いもの」とされたのに、人間自身がそれを破壊したのです。そして、神を基準とすることを拒絶したことで、人間の尊厳の根拠も失いました。人間が自分で「人間は尊い」などと宣言しみても「人間を殺してはならない」と叫んでみても、その根拠を自分で破壊してしまったのですから、説得力はありません。

人間が、人間を基準にしてできることは、せいぜい「復讐」「刑罰」による殺人、殺戮の抑止です。やったら、それ以上にやり返すぞ、という「恐怖の原理」です。民主主義国家でさえも、殺人抑止策として、禁固刑、終身刑、死刑といった刑罰による「復讐の原理」を採用しています。命の尊厳も人権も「復讐の原理」なしでは守れないのです。そして、今日の世界平和も、「復讐の原理」と「恐怖の原理」でかろうじて維持されているのです。

②結婚の土台の崩壊

ついで人間は、神が制定された「一人の男と一人の女が一体となる」という「結婚の土台」を崩します。神は、一人の自立した男と一人の自立した女が対等な立場で結婚し一つになるように、結婚制度を定めておられました。男と女の特性は異なっても、互いを必要とするという意味で対等だったのです。しかし、それを無視し、人間の力という基準を結婚に持ち込んで、一夫多妻と男尊女卑を合理化していきました。その最初が、復讐の原理を宣言したレメクです。レメクはアダとツィラという二人の妻を持ち、妻を支配し始めます。一夫多妻、男尊女卑の始まりです。

以後、人間は、「一人の男と一人の女が一体となる」という結婚の基準を、人間の理屈で壊し、それ以外の様々な結婚の形態や性を正当化していきました。しかし、「一人の男と一人の女」でしか、一体にはなれないのです。