創造主が万物の基準 vs 人間が万物の基準㉓

創造主が万物の基準 vs 人間が万物の基準㉓

Ⅱ 人間が万物の基準である(20)

 5.ヨーロッパ近代と啓蒙主義

6)人間至上主義と「超人類」への進化

②人間至上主義から「超人類」へ

しかし、言うまでもなく、この人間至上主義という新宗教自体が一つのフィクション、虚構、共同幻想です。それがフィクションであるかぎり、新たなフィクションに取って代わられる日が必ず来ます。「神」として地球に君臨している人類(ホモ・サピエンス)が別の種に超えられてしまうのです。そして、その日が近づいているとハラリは言います。

まず、19世紀の産業革命で、機械が人間の肉体的能力を超えるようになりました。そして、21世紀に起こりつつあるAI革命で、AIが人間の「認知能力」を凌駕する日がそこまで来ているのです。

遺伝子工学やAIテクノロジーによって、人為的に進化を導いたり、「人間の心」を作り直したりすることができるようになると、「新しい神」の性質をもつ「超人」(ホモ・デウス、神の人)の時代に入ります。そうなれば、ホモ・サピエンスという人類は「時代遅れ」になり、人間が「神」であった歴史は終焉を迎えます。進化説の論理に従えば、ホモ・サピエンスがネアンデルタール人を淘汰したように、今度は超人(ホモ・デウス)がホモ・サピエンスを淘汰することになるのです。その日には、ホモ・サピエンスは元の無意味、無価値、無目的な有機体に戻ります。

この事態を阻止するため、人類が人権や人間の平等を大義として、環境に最も適した優秀な人間を去勢したらどうなるか。ホモ・サピエンスは進化できなくなります。そして、超人の誕生が妨げられ、結局、人類自身の退化や絶滅の危機を招くことになるかもしれないというのです。

ハラリによれば、今後のテクノロジー革命の可能性は、次の二つです。

一つは、遺伝子編集によって、人間の肉体、脳、精神がデザインされ、百年以上生きる超人が生まれる。もう一つは、有機体生命(人間)が、AIサイボーグや無機体生命(AIロボット)に置き換わる、です。そしてAIは、放っておいてもディープラーニング(deep learning)で、自ら進化するそうです。