創造主が万物の基準 vs 人間が万物の基準㉔

創造主が万物の基準 vs 人間が万物の基準㉔

Ⅱ 人間が万物の基準である(21)

 5.ヨーロッパ近代と啓蒙主義

6)人間至上主義と「超人類」への進化

③超人類(ホモ・デウス)と人類(ホモ・サピエンス)の世界

40億年ほど前に地球に原始生命が誕生して、今日まで生物は自然淘汰で進化してきました。それが、今や人為的に進化させる時代に入ったというのです。AI技術と遺伝子工学によって、神のような知識と超能力を持つそうです。ただ進化するのは、人類のうち10数パーセントのエリートだけです。

それにしても、なぜ人為的に進化させなければならないのか。

それは進化することが、人間至上主義の宿命だからです。人間はすべてを知り、すべて支配することを求めて、永遠性を目指してきました。永遠の若さと不死を獲得することは、人類の最大の願いでした。そのためには進化するしかないのです。

また、現代の絶望的な地球環境問題や国際紛争問題などから人間を救わなければなりません。それは差し迫っての必要です。そのためにも、ホモ・サピエンス(知恵の人、賢い人)をホモ・デウス(神のような人)にアップグレード、つまり進化しなければならないのです。

さて、問題はここからです。仮にそうなったとして、アップレートできなかった人間(ホモ・サピエンス)はどうなるのか、ということです。それはおそらく、40億年の生命の進化で、淘汰されていったおびただしい種の運命と同じ運命をたどることになるのでしょう。人間(ホモ・サピエンス)は生き残りますが、存在価値や尊厳を失ってしまいます。AI技術でアップレートしたホモ・デウスとの間には、人間とサルほどの違いがあるからです。ただし、アップレートした人間は、できなかった人間を奴隷化するようなことはしません。なぜなら、サルが人間社会では役に立たないのと同様に、人間もホモ・デウスの社会では何の役にも立たないからです。

従来の「人権」は守ってもらえるかもしれません。人間が動物保護法を作っているのと同じようにです。とはいえ、AI技術によってすべてが行われるので、人間には何もすることがありません。そんな世界で、ホモ・サピエンスとしての知能だけはもっている人間が、いったい何をして暮らすのか。仕事や研究の分野で達成感を得ることが生き甲斐でしたが、そうした働きのすべてをAIに奪われてしまいます。一生懸命努力し、働けば報われるという時代は去ります。何をしてもホモ・デウスにまさるものを創り出すことはできません。しかし、働かなくても食べ、服を着て、建物の中で生活はできます。AIに養ってもらうのです。

おそらく、人間はゲームやギャンブルをしたり、酒や薬物にひたったり、恋愛ごっこをしたりすることになるのでしょう。そうすることで、人間存在の「空の空」を欺いて、死ぬ日まで生きるのです。