No.033 「サタンの国」の建設
- 2020.02.03
- 三つのテーマで読む創世記(上)
創世記4章9—17節
主は彼に仰せられた。「それだから、だれでもカインを殺す者は、七倍の復讐を受ける。」そこで主は、彼に出会う者が、だれも彼を殺すことのないように、カインに一つのしるしを下さった。それで、カインは、主の前から去って、エデンの東、ノデの地に住みついた。カインはその妻を知った。彼女はみごもり、エノクを産んだ。カインは町を建てていたので、自分の子の名にちなんで、その町にエノクという名をつけた。(15—17)
主はカインに、主に立ち返るチャンスを何度か与えられました。一度目は「あなたはそれを治めるべきである」と勧告されたときです。二度目は、「あなたの弟はどこにいるのか」と問われたときです。しかし、カインは「私は自分の弟の番人なのでしょうか」と白を切ります。主に弟殺しを突き付けられても、自分の「罪の重大さ」より、自分にふりかかる「罪の結果の大きさ」に恐れをなします。そして、「私に出会う者はだれでも私を殺す」と訴えるのです(11-14)。それに対し、主は最後の悔い改めのチャンスをお与えになりました。「誰でもカインを殺す者は、七倍の復讐を受ける」、つまり「カイン、あなたを守るから、悔い改めて私のもとにとどまれ」と言われたのです。
このように、主は憐れみをもってカインに臨まれました。しかし、それでもカインは主に立ち返ることなく、「主の前から去って」しまいます。そして、エデンの東、ノデの地に住みつき、町を建てるのです。
「主の前から去る」とは、主の支配(神の国)から離れ、サタンの支配(サタンの国)に入ることです。カインが住んだノデの地は、その名の通り「放浪者、動揺」の地です。そこに建てた町エノク(始まりの意)は、サタンが支配する都市の「始まり」でした。
カインは、エノクの町に、神を排除した社会を築き始めます。
神なしですべてを機能させる文化の形成です。人間が、人間を基準にして判断し、人間の力で産業を興し、人間の栄光のために突き進んでいく文化です。しかし、その根底にあるのは罪=死の支配、すなわち死への恐れ、罪責、虚無、孤独です。人々の心に巣食っているのは、高慢、妬み、憎しみ、怒り、殺意です。エノクは、サタンの性質を体現した町なのです。ここに、現代都市文明の起源があると言えましょう。
やがて、エノクの町もノアの洪水で滅び去ることになりますが、カインが始めた都市文化の原型は、洪水後もソドム、ゴモラに引き継がれ、バビロン、バビロン捕囚前の神の都エルサレム、あるいはローマ、そして今日の諸都市へと受け継がれていくのです。
今日、政治の場でも、公立の学校でも、一般社会の公の場でも、神を語ることは禁じられ、神を基準にした道徳や価値基準を表明すれば嫌悪されます。キリスト信仰は個人のプライベートな世界だけに閉じ込められてしまいました。いや、クリスチャン自らが個人主義の信仰を良しとし、自己規制しています。サタンの思惑通りです。
私たちは、このサタンの国の文化社会の只中にあって、神の国に生きています。日々、アウェーの戦いです。極めて困難な戦いです。しかし、この戦いを止めれば、サタンの文化の空気を吸わされてしまうことになります。
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