No.035 「神の国」の復興
- 2020.02.10
- 三つのテーマで読む創世記(上)
創世記4章25—26節
アダムは、さらに、その妻を知った。彼女は男の子を産み、その子をセツと名づけて言った。「カインがアベルを殺したので、彼の代わりに、神は私にもうひとりの子を授けられたから。」セツにもまた男の子が生まれた。彼は、その子をエノシュと名づけた。そのとき、人々は主の御名によって祈ることを始めた。
エデンの園追放後の最初の「神の国」の代表者はアベルでした。主に正しい捧げ物をし、主とのつながりを回復していました。そのアベルがカインに殺されたあと、主は新たにアダムとエバからセツ、エノシュを生まれさせ、「主の御名によって祈る」人々を興されました。カインが「主のもとを去って」始めたサタンの国の文化に対し、セツ、エノシュ親子が「神の国」の勢力を再興したのです。
セツ、エノシュは、おそらくアベルと同じように、主に正しい捧げ物をして、主との交わりを回復していたことと思われます。その上で、主の御名で祈ることを始めたのでしょう。捧げ物と祈りで創造主と向かい合い、主を知ることを喜びとする、つまり礼拝です。エデンから追放された人々による礼拝が始まったのです。
セツの系図は、その子エノシュ、そして、エノク、ノア、アブラハム、ダビデ、イエス・キリストへとつながっていきます(ルカ3章)。「神の国」の流れがセツ、エノシュによって据えられました(ヘブライ語表記ではセツはShet、土台はシャートで同じ語幹)。
こうして、カインの系図とセツの系図、つまり神を排除した「サタンの国」の流れと、神を礼拝する「神の国」の流れという、二つのグループが形成されました。人類は、創造主に「祈る人々」と「祈らない人々」に、そして創造主との「つながりを築く人々」と「断ち切る人々」に、分かれたのです。
この章をまとめておきます。
サタンは、カインの血筋によって、「サタンの国」の流れを創り出しました。サタンの国は、人間が神のようになり、人間を基準としてすべてを判断するという人間中心の社会です。神を排除した文化、政治、経済、教育制度が形成され、妬みと怒り、憎しみと人殺し、男尊女卑と復讐の文化が、社会を支配していきます。カインが「主の前を去って」建てた町エノクは、現代の世俗社会、罪の文化の発祥地です。
一方、主なる神は、アベル、セツとエノシュの親子によって「神の国」を復興なさろうとされました。神の国は、正しいささげ物と祈りで神とのつながりを回復し、神の教えを基準にして生きる神中心の社会です。セツ、エノシュが始めた礼拝の生活は、イスラエル共同体、そして今日の教会の礼拝の起源です。
以後の世界は、「神の国」と「サタンの国」の戦いの中にあります。しかし、神は御子キリストによる「勝利宣言」をなさっています(3:15)。すでにサタンの敗北が宣告された上での戦いです。その神の国の勝利を現実のものとするには、まず「サタンの国」の戦略や戦術、サタンの欺きを賢く見破ること、そして主に自分を捧げ、祈り、礼拝し、主との親しい関係を保ち続けることです。
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